ある日突然やってくる、サイレントキラーの恐怖!
その日は突然やってきました。職場について車から降りたとたんに右足の膝に違和感を感じ、膝の屈伸をしてみましたが違和感は消えませんでした。
膝に力が入らない感じがするのです。車を40分ぐらい運転してきたからかな?少し休んでいるうちに回復するだろうと思い休憩室で休んでいました。
その時、私の体には恐ろしい「サイレントキラー」が訪れていたのでした。「静かな殺し屋」、「沈黙の殺し屋」。サイレントキラーはある日突然訪れます。
私を訪れたサイレントキラーは脳梗塞(のうこうそく)でした。左脳の血管が血栓で詰まり右半身に麻痺が起きたのです。
私は45歳の頃から高血圧症で降圧剤を処方していました。薬を服用した状態で血圧は140-80くらいを推移していました。しかしこの頃は、150-85を推移していて少し気にはしていました。
1カ月に1回かかりつけの医者に通っていましたが、血圧の測定値
は、いつも155-90ぐらいでしたがお医者さんは、全然、気にも留めませんでした。そして私も気にしなくなっていました。
全く症状のない高血圧。しかし高血圧も恐ろしいサイレントキラーなのです。その影響でコレステロールが動脈壁に粥(かゆ)状に塊(プラーク)を作り、その周りに血栓ができそれがはがれて抹消の血管を閉塞させます。
こうして発症した脳梗塞がアテローム血栓性脳梗塞といいます。私もこのアテローム血栓性脳梗塞を発症してしまったのです。
今回は、私が経験した恐怖のサイレントキラー。脳梗塞についてご紹介いたします。
脳梗塞はどうして、なってしまうのか?その原因と初期症状はどうなるか?
私がかかってしまった病。脳梗塞はどんな病なんでしょうか?その原因と初期症状を解説いたします。
【脳梗塞の初期症状】
脳梗塞は突然起こるもの、というイメージがあるかもしれませんが、予兆というのがあります。私の場合は、右足の膝が「カックン」として力が入らないことでした。
脳梗塞の予兆は、一過性脳虚血(いっかせい、のうきょけつ)発作といって、短くて数分、長くても30分程度で症状が治まってしまいます。そのため「ちょっと調子が悪いのかな」という感じで放っておいてしまいがちなのです。
しかし、一過性脳虚血発作が起こると約5%から20%の人に脳梗塞が発症すると言われています。私の場合も予兆を感じてすぐに救急車を手配したので救急搬送される時には、軽くて済んだと思いました。
しかし病院に着いた時には、右半身が全く動かない状態になっていました。MRIで脳検査の結果、脳梗塞と診断されました。
後で写真を見せてまらいましたが左脳がほんの少し詰まっている程度でしたがこれだけで人間の身体は、こんなに動かなくなってしまうのかと不思議な感じでした。
また、脳梗塞になる半数の人は、一過性脳虚血発作が起きてから48時間以内に発症しています。また約3割の人は3ヶ月以内に発症するというデータもあるので、予兆には十分注意をしなくてはいけません。
予兆は急にろれつが回らなくなったり、言葉が出なくなる失語症や顔がゆがむ片側顔面麻痺、道路が波打って見える視力障害や両手を持ち上げようとしても片腕だけ上がらない、といった症状も予兆として挙げられます。
このような異変が起きた場合は、一過性脳虚血発作の可能性がありますので迷わずに医療機関で診察を受けるようにしましょう。
私も今思うと、発症の数カ月前に車の中で家内と会話をしていた時に急にろれつが回らなくなって家内に笑われたことがありました。
その時は、すぐに普通に戻ったので笑い話に終わってしまいましたがもし、その時に一過性脳虚血発作の知識があったら、そしてすぐに医療機関で検査を受けていたらと思うと残念です。
脳梗塞になってしまったらどんな治療方法があるのか!手術は必要なのか?
不幸にも脳梗塞になってしまったらどんな治療方法があるのでしょうか。また手術が必要な場合もあるのでしょうか解説していきます。
治療法
t-PA(組織型プラスミノーゲン・アクティベータ)という薬剤を点滴で投与し詰まった血栓を溶かす方法です。約4割の患者さんは、症状がほとんどなくなる程度まで回復します。現在、最も有効とされる治療法で、発症4.5時間以内まで使用可能です。
私もこの治療を数日間受けました。この間、血圧が上限200になるまでは、降圧剤を使って血圧を下げることはしません。私は180もありましたが降圧剤を使って血圧を下げることはしませんでした。
【動脈内血栓溶解療法】
詰まっている血管の手前までカテーテル(細い管)を入れて、そこで血栓溶解薬を注入し、詰まった血栓を溶かす方法です。発症6時間以内の脳梗塞に有効とされています。
【血管内治療(メルシーリトリバー・ペインプランシステム)】
t-PA 治療が行えない場合で、発症8時間以内の脳梗塞に、カテーテルを使って詰まった血栓を除去する方法です。
現在、コルクの栓抜きの形をした装置で血栓を絡め取る「メルシーリトリーバー」と、血栓を吸い取る「ペナンブラシステム」の二つの方法があります。
私が入院した病院ではt-PA治療しか行われませんでした。それでも4人部屋の私以外の3人はt-PA治療で回復して大きな後遺症もなく退院していきました。
私が一番重い症状で1週間のt-PA治療終了後も右半身は、全く動かない状態で、もちろん立つことも出来ませんでした。トイレに行くときは、看護師が3人がかりで車いすに乗せて連れていきました。
このように脳梗塞の治療は血栓を点滴で溶かすか、カテーテルで血栓を吸い込かワイヤーに絡めて引き抜くかの方法になります。
脳梗塞になったら必ず後遺症が残るのか?どんな後遺症があるのか?
脳梗塞の治療が終了し退院した後、リハビリテーションセンターに3カ月間入院しましたがそこでは、真っ先に目にしたのは50人くらいの、車イスで移動する集団でした。ショック!
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血など脳の障害を総称して脳卒中といいますが脳卒中の特徴は、後遺症が残る事です。見た目、完全に見える人でも何らかの後遺症があります。
脳卒中の後遺症
【運動麻痺】
手足の指の動きのみに障害が起こる、軽度なものから手足が動かなくなる重症のものもあります。
私の場合は、右足に装具(取り外し可能なギブスのような補助具)を付けて左手で杖をもって、やっと10mくらい歩ける程度です。右手はほとんど動きません。センターで足の強度の測定をされましたが右足は左足の半分の強度しかありませんでした。
【感覚麻痺】(しびれ)
麻痺が起きた側では、触られたときに冷たい、温かいといった感覚がわかりにくくなります。私の場合は、右手で物を触っても丸い物か四角い物か、細い、太いの判別ができません。そして常にしびれがあります。
【視野障害】
視野の半分しか見えなくなる半盲障害。半盲は左目で見ても、右目で見ても、あるいは両目で見ても視野の左右どちらかが見えなくなる視野の障害です。
視野の4分の1が欠けるなど、部分的に見えなくなる視野欠損が起こる視野の障害もあります。
【言語障害】
話すことができなくなります。全く話せない人とろれつがまわらない話し方をする人がいます。会話ができないことは、大変つらい障害です。
【失語症】
失語症は運動性失語と感覚性失語の2つのパターンに分かれます。運動性失語とは、思った通りに話せなくなる場合です。感覚性失語とは、的はずれなことを答えてしまう場合です。
【高次機能障害】
高次機能障害には、失認という視覚などに障害ないのに、物を認識できなくなる症状があります。また失行という、ふだん使用している物の使い方や衣服の着方がわからなくなる症状があります。
【嚥下(えんげ)障害】
食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる障害です。ひどい場合には、流動食となります。私が入院していたリハビリテーションセンターでも流動食の患者さん。リハビリで回復して流動食を卒業した患者さん。いろいろな方がおりました。
流動食を卒業して4カ月ぶりにやっと食事がとれるようになった患者さんは、涙を流して喜んでいました。ささやかな幸せですね。
まとめ
・サイレントキラーとは、高血圧症や糖尿病のように痛みや苦しみなどの自覚症状のないままに身体に致命的なダメージを与える病気です。
・高血圧症を放っておくと脳卒中、心筋梗塞などの死に至る病にかかります。
・脳卒中は必ず後遺症が残り、退院後の社会復帰や日常生活に大きな負担となります。軽度の脳梗塞の人でも味覚障害が残ったり、手足のしびれに悩んでいます。